ひとたび発生すれば、短期間で世界的な大流行になる恐れがある。感染を封じ込める国際的な対策を進めるとともに、国内の準備を急がねばならない。
世界保健機関(WHO)の集計によると、鳥インフルエンザで死亡した人は14カ国で230人以上に上る。8割以上がアジアだ。
とりわけ深刻なのはインドネシアである。これまでに105人が亡くなっている。伝統的に鶏を飼っている家庭が多い。政府の財政難も影響し、大量処分してウイルスを封じ込めることが難しい。患者発生に歯止めがかけられないのだ。
まだ限定的な事例だが、人から人への感染もある。昨年末、中国で父子間の感染が明らかになった。
「鳥から人」の感染が繰り返されると、「人から人」へ容易に感染するウイルスへ変異する危険性が高まると考えられている。既に鳥の体温より低い人の体温でも増殖できるようになったウイルスが見つかっている。徐々に人に感染しやすくなっているということだ。
いったん新型インフルエンザが発生すると、免疫がないために、世界的に流行が広がる。のんびり構えてはいられない。
いますべきは、鳥インフルエンザの感染を抑えることだ。インドネシアは欧州連合(EU)などの援助を受けて、新たな感染防止策を始めた。感染の集中するアジアに国際的な支援を広げたい。新型に変異する可能性をつぶせないとしても、感染経路の解明やワクチン開発など、準備に取り組む時間が稼げる。
「新型」が発生したら、最も大事なのは、早期の報告と発生地での封じ込めに全力を尽くすことだ。
新型肺炎(SARS)の発生時、中国は当初、感染者と死者を実態より少なく発表していた。それが、犠牲者を増やしたという批判がある。国内外に正確な情報を伝えて、住民や医療機関に冷静な対応を求めるのが各国の責務だ。
日本では2005年に新型インフルエンザに対応する行動計画をつくった。ワクチンと治療薬の備蓄などを進めているものの、準備は十分とはいえない。
医療機関の態勢も心配だ。計画によると、患者は指定された医療機関が受け入れることになっている。病院勤務医が足りず、救急の拒否や診療科の縮小が相次ぐ中で、実際に対応できるのか。定期的に実情にあった方策を検討すべきだ。
信濃毎日新聞[信毎web]|社説=インフルエンザ 「新型」の出現に備えを
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